ギャラリーめぐりから始める、現代アートの楽しみ(「下北沢アーツ」鈴木裕子さんに聞く)

暮らしの空間に、彩りを添えてくれるアート作品。手軽に手に入るアートポスターも良いけれど、作家のオリジナル作品には、作品そのものだからこそ感じることのできる迫力や味わいがあります。

いつか我が家にも、一点物のアート作品を迎えたい。でも、気に入る作品にはどこで出会える? 値段はどれくらい? 初心者にとってアートの世界はちょっと敷居が高いもの。

そこで、今回は初心者のためのアート指南。東京・下北沢のコマーシャル・ギャラリー「下北沢アーツ」代表・鈴木裕子(すずきひろこ)さんに、アートの楽しみ方を教えていただきました。

「下北沢アーツ」代表・鈴木裕子さん

アート入門[1]好みのギャラリーを見つけよう

――本日は、下北沢アーツさんにお邪魔しております。こちらはコマーシャル・ギャラリーとのことなのですが、まずコマーシャル・ギャラリーとは何ですか?

鈴木さん(以下、敬称略): コマーシャル・ギャラリーとは、場所貸しするだけのレンタル・ギャラリーとは異なり、ギャラリー側が選んだ作家の作品を展示販売するギャラリーです。ギャラリーによってどんな系統の作品を選ぶか特徴があり、画商の個人名を冠したギャラリーが多いのもそのためです。

下北沢アーツは、下北沢の街に焦点を当てたいと名付けました。私自身が30年以上暮らしてきた下北沢に愛着があり、自分がシモキタに所属している感覚なんです。

訪れたいアート・スポット「天王洲」「六本木」

――アート・ギャラリーというと、初心者としてはちょっと足を踏み入れがたいと言いますか、入るのに勇気がいります。

鈴木: 緊張しますよね。でも、ぜひ気軽に足を運んでみてください。無料で入ることができて、さまざまな作品を観ることができます。

最近は家にいる時間が増えたことで、住まいの空間づくりへの関心の高まりとともにアートに注目が集まっていて、現代アート・バブルとも言えるような活況を呈しています。

東京で言うと、いま現代アート・スポットとして熱いのが、天王洲と六本木です。天王洲は、「寺田倉庫」が運営するギャラリー群。六本木は、六本木ヒルズそばの「complex665」と「ピラミデビル」という隣接するふたつのビルに有名ギャラリーが多数入っています。一度にたくさんのギャラリーめぐりができて、楽しいですよ。

おおよそ月に一回程度、展示替えをしているので、月に一回は行ってみるといろいろな作品が観られます。

ギャラリーごとに個性がありますので、お気に入りのギャラリーが見付かると、好みの作家や作品と出会いやすくなると思います。ギャラリーによっては所属アーティストがいて、Webサイトなどで情報が見られます。

気になる「オープニングレセプション」というものについて

――ギャラリーの展示会情報で見かける「オープニングレセプション」とはどういうものですか? 誰でも行ってよいのでしょうか?

鈴木: Webサイトなどの案内に何も注釈がなければ、どなたでもウエルカムです。

そこには必ず作家さんがいて、アートコレクターとか作家さんの関係者などが集まって初日を盛り上げるということと、欧米だと批評家が来て批評を書き、評価が良ければ会期いっぱい人がたくさん来るというようなこともあります。

ドリンクがふるまわれたりしますので、通りがかりにちょっと寄って帰られる方もいらっしゃいますよ。たくさんの人にいっぱい来ていただけると嬉しいです。

アート入門[2]気に入った作品を買ってみよう

――私のような初心者としては、作品を買うとなると気後れしてしまいます。まずはアートポスターあたりで修業を積んでからなんてまごまごしちゃうのですが。

鈴木: アートは作家の思いが込められたものですけれども、商品でもあるので、お金を出せば買えるもの。ヨーロッパだと、蚤の市で質の良いアートを売っていたりして、とても身近にあるものです。

家に飾るインテリアとしても考えているんだったら、カーテンとか洋服と同じような感じで、好みのものを飾る楽しさというところをまずは始めてみるのが良いと思います。

ギャラリーや美術館などにいっぱい観に行って、自分の好みみたいなものがわかってきたら、好みの作品をよく飾っているようなギャラリーに行って探してみましょう。ギャラリーには、作品リストと価格、販売状況が分かるシートが置いてあります。

アート作品は、何千万円というところから何万円というところまであるので、価格的にも許容範囲の一点物の作品を買ってみることをおすすめします。自分の中で納得感がある作品を買って飾ってみるということです。3万円くらいの作品であれば、気に入って長く飾って楽しむのであれば、高くはないという感じではないでしょうか。

――最近は、投機的な意味合いでアートが売買されるニュースも見聞きします。投機なんて聞くと、ますますビビっちゃいます(笑)

鈴木: 自分の審美眼が良くて、買った作品がたまたま値上がりしたらラッキーくらいに思っていると良いのでは(笑)

投機を本格的に考えるなら、オークションのカタログなどで検討するという方法もあります。

2年前の新型コロナウイルス感染症の流行から、レジャーや会食がなくなったことで、お金の使い道として投機的な方向で現代アートが日本でも買われるようになっています。すごく値段が高くなっている若手現代アーティストもいますよ。

アート入門[3]買ったら飾ってみよう。額装はどうする?

――アート作品を飾る場合、額装はどうしたらよいでしょうか。アートポスターを飾ろうとして、フレームで四苦八苦したことがあります。フレーム自体、素敵なものはかなり高価ですよね。作品と同じくらいの気合で選ばないとならないというか。

鈴木: 作品って、額装で全然変わっちゃいますね。

例えば、印象派の作品はとんでもなく豪華な額に入っていますが、あれは画商の売るための戦略だったんです。

私としては、キャンバスに油彩の作品だったら、額装はしないほうが楽しめると思います。

直射日光が当たる場所に飾る場合は、UVカットのアクリルケースに入れるなどしたほうが良いこともありますが、油彩のそのままのタッチを生の目でみられるようにした方が。現代アートを楽しむ方は、そういう感覚の方が多い気がします。

額装もいろいろありますが、あんまり絵に干渉したくないので、現代アートだと白い枠とかアクリルだけとかシンプルにした方が無難な場合が多いですね。

額装の相談や手配は、ほとんどのギャラリーで対応していますよ。

アート入門[4]買った後のお手入れは?

鈴木: ギャラリストが作品を触る場合は、必ず白い手袋をします。手には皮脂がありますので、作品についてしまうと、すぐにどうこうということはなくても長い目で見て傷みの原因になるということですね。

表面についたホコリなどは、基本的にはブロワーなどで触れないように取るのが良いです。

「現代アート」とは?

――ここまで、アートの楽しみ方を教えていただきました。しり込みせずに、いろいろ観に行ってみようと楽しみになってきました。最後に、そもそもですが「現代アート」というのはどういうものなのでしょうか?

鈴木: マルセル・デュシャンの『泉』という作品(1917年製作)が始まりとされる、コンセプトを持って表現されたアート作品が現代アートです。作家が存命かどうかというのは関係なくて、現在活躍されている作家でも現代アートの作家とは限りません。

下北沢アーツでは、現代アートの若手作家さんの作品を中心に紹介していきます。作品のアウトプットに、知的な部分と品を感じる作品、ひとひねりある作品をご紹介していきたいと考えています。

作品を鑑賞するのはもちろんですが、作家さんとの交流も楽しいものです。作家さんたちは感性の強い方々なので、まったく新しいものの見方を聞けたりして、ちょっと話すだけでも刺激を受けます。

現在展示中の福原優太さんも、これからどんどん活躍していく作家さんだと思いますが、そういった若手作家さんの活躍の途中を見られるというのも醍醐味です。福原さんは、今回の個展に合わせて下北沢を描いてくれました。作家さん自身がギャラリストやコレクターと話をして、その作品が変わっていくということも刺激的です。

アートを楽しむみなさんには、作家のコンセプトや世界観を丸ごと、長く支援していただけると嬉しいです。

福原優太さんが描いた下北沢(写真右)

ギャラリーめぐりという楽しみ

鈴木さんの薫陶を受けて、さっそく天王洲や六本木のアート・ギャラリーめぐりに繰り出しました。敷居が高いと思っていたアート・ギャラリーですが、いざ訪ねてみれば、無料だし気ままに行けるしで、チケット代金を払って行く美術館でのアート鑑賞とはまた違う楽しさがありました。

ふらりと行ってアート作品に出会える気軽さを知ると、やみつきになりそうです。ひとりでのんびり行くのも、デートにもおすすめです。

自分の世界に浸って鑑賞したい人や、ギャラリストや作家とのコミュニケーションを楽しみたい人、作品をコレクションしたい人など、アートの楽しみ方はきっと人それぞれ。ギャラリーも、その個性はさまざまということなので、まずは自分のアートの好みを知って、自分流の楽しみ方を見つけたいところです。

ギャラリーへお出かけの際は、展示替え時期でお休みの場合もあるので、公式サイトなどで展示スケジュールのチェックを。

現代アート・ギャラリー ガイド

鈴木さんに教えていただいた、現代アート・ギャラリーが掲載されているガイドです。サイト自体、見た目が現代アートのようです。掲載されているギャラリーに隔月発行の紙のマップが置いてあり、そちらが便利。
GUIDE https://www.guide-gallery.jp/

下北沢アーツについて

2022年3月に開業した下北沢駅高架下の「ミカン下北」から、小田急線路跡地の個店街「reload」を結ぶ、茶沢通り沿いに佇む白タイルの建物が「下北沢アーツ」。

代表・鈴木裕子さんは、父がアートコレクターで、子供のころからアート作品が身近にあった。元公務員。ギャラリー勤務を経て「下北沢アーツ」オープン。

<店舗概要>
下北沢アーツ
所在地:〒155-0031 東京都世田谷区北沢1-40-9-1F
小田急小田原線 / 京王井の頭線 下北沢駅東口より徒歩4分
TEL:03-6804-7636
URL:https://shimokitazawaarts.tokyo

<展覧会概要>
福原優太個展「ガーデン」
開催日時:2022年4月1日(金)-5月8日(日)
営業時間:13:00-19:00
休廊日:4/5-7、12-14、19-21、26-28、5/2、6
*4月22日頃から展示替え予定

<参照>
コマーシャル・ギャラリー「下北沢アーツ」開店 | japonism




japonism 編集長
大手ISP、東京・銀座の着物小売り店など勤務の後、独立。美容誌Webサイトディレクターをはじめ、CGM、企業オウンドメディア等、各種Webメディアの企画・編集に従事。着物好きが高じて着物の着付師修行も、手先不器用のため断念。それでも、大好きな日本の文化・いいモノ・コト・ヒトを伝えたいと、日本のいいね!が見つかるメディア『japonism』を、2018年6月たちあげ。日本のアップデートに、微力ながら貢献できればうれしい。

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